この記事で分かること
- 補助金と助成金を見分ける3つの軸(所管する役所/財源/審査の性質)
- 実在する4制度で比べた金額規模の目安と、どちらも後払いであること
- 従業員の有無で入口が変わるという、自社の狙いどころの考え方
一言でいうと、財布が違う
同じ「返さなくていいお金」でも、補助金と助成金は出どころが別です。ざっくりした対応関係は次のとおりです。
| 補助金 | 助成金(雇用関係助成金) | |
|---|---|---|
| 主な所管 | 経済産業省・中小企業庁、自治体 | 厚生労働省 |
| 主な窓口 | 商工会・商工会議所、中小機構など | 都道府県労働局・ハローワーク |
| 原資 | 国や自治体の予算 | 雇用保険二事業の保険料(事業主のみ負担) |
| 支援したいこと | 設備投資・販路開拓など事業の成長 | 正社員化・賃上げ・人材育成など雇用の改善 |
| 選ばれ方 | 公募期間内に申請し、審査で採択・不採択が決まる | 定められた支給要件を満たすかで判断される |
ただし後述のとおり、この呼び分けは法律で決まったものではなく例外もあります。まずは3つの軸を順に見ていきます。
軸①:どの役所が出しているか
補助金の入口は中小企業庁です。中小企業庁のサイトには「補助金の公募・採択」という区分があり、そこから各制度の公募要領が公開されます。事務局は制度ごとに異なり、小規模事業者持続化補助金なら商工会・商工会議所、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金なら中小企業基盤整備機構(中小機構)が担当します。
出典:中小企業庁 補助金公募情報/新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(中小機構)
助成金の入口は厚生労働省の「事業主の方のための雇用関係助成金」です。相談・申請先は都道府県労働局やハローワークで、業務改善助成金であれば労働局の雇用環境・均等部(室)が窓口になります。
出典:厚生労働省 事業主の方のための雇用関係助成金/業務改善助成金
「商工会議所に相談する話」なのか「労働局に相談する話」なのか。この時点で、もうかなり性格が分かれています。
軸②:財源が違い、それが対象範囲に効いてくる
厚生労働省の雇用関係助成金の原資は、事業主が納めている雇用保険料です。雇用保険料率は3つの区分に分かれており、令和8年度(2026年度)の一般の事業では次のようになっています。
| 区分 | 令和8年度の料率(一般の事業) | 負担者 |
|---|---|---|
| 失業等給付・育児休業給付 | 労働者5/1,000+事業主5/1,000 | 労使折半 |
| 雇用保険二事業 | 3.5/1,000 | 事業主のみ |
| 合計 | 13.5/1,000 | — |
この「雇用保険二事業」(雇用安定事業・能力開発事業)の分が、雇用関係助成金の財源にあたる部分です。労働者負担はここに入っていません。建設の事業は4.5/1,000です。
出典:厚生労働省 令和8年度 雇用保険料率のご案内(PDF)
財源が雇用保険である以上、支援の対象は「雇用されている労働者」に関わる取組が中心になります。実際、業務改善助成金の案内には「労働者(従業員)の事業場内最低賃金を引き上げるための支援制度であるため、労働者(従業員)がいない場合は、助成の対象となりません」と明記されており、賃金を引き上げる対象労働者も週所定労働時間20時間以上の雇用保険被保険者に限られます。
出典:厚生労働省 業務改善助成金/令和8年度リーフレット(PDF)
一方、補助金は国の予算による補助事業です。小規模事業者持続化補助金の公募要領には「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)に基づき実施されます」と書かれています。補助対象者の要件は従業員数の「上限」で定められており、下限の定めはありません。
出典:小規模事業者持続化補助金 第20回公募要領 第8版(PDF)
軸③:審査の性質が違う
補助金には公募期間があり、審査を経て採択・不採択が決まります。小規模事業者持続化補助金の公募要領は冒頭で「本補助金は、審査があり、不採択になる場合があります」と明言しています。応募が集中すれば、内容が良くても通らないことがある仕組みです。
助成金は、あらかじめ定められた支給要件を満たすかどうかで判断されます。たとえばキャリアアップ助成金(正社員化コース)の受給条件は次の3つです。
- 正規雇用労働者に転換する前日までに「キャリアアップ計画」を作成・提出していること
- 正規雇用労働者に転換する制度を就業規則などに規定していること
- 転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間の賃金より3%以上増額させていること
出典:厚生労働省 キャリアアップ助成金(正社員化コース)リーフレット・令和8年4月8日版(PDF)
ただし「要件さえ満たせば無条件」ではありません。業務改善助成金は労働局が交付申請を審査したうえで交付決定する流れで、リーフレットには「予算の範囲内で交付するため、申請期間内に募集を終了する場合があります」と書かれています。同一事業所の申請は年度内1回までです。助成金にも予算枠と受付期間があると考えておくのが安全です。
金額規模の目安を実在制度で比べる
制度名を出して並べると、規模感の差が見えます。
| 制度名 | 区分 | 金額 |
|---|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠> | 補助金 | 補助上限50万円/補助率2/3(インボイス特例+50万円、賃金引上げ特例+150万円) |
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | 補助金 | 枠と従業員数により最大2,500万〜9,000万円/補助率1/2〜2/3 |
| キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 助成金 | 中小企業・有期雇用から正社員化で1人あたり40万〜80万円、事業所単位の加算あり |
| 業務改善助成金 | 助成金 | 最大600万円/助成率3/4または4/5(引上げ額と人数で上限が変動) |
出典:持続化補助金 第20回公募要領 第8版(PDF)/新事業進出・ものづくり商業サービス補助金/キャリアアップ助成金リーフレット(PDF)/業務改善助成金リーフレット(PDF)
助成金は「金額が小さい」わけではありません。業務改善助成金の最大600万円は、持続化補助金の基本上限50万円を大きく上回ります。金額の大小ではなく、何に対して出るお金かで選ぶことになります。
なお、人材開発支援助成金も従業員10人以下の事業者が使いうる厚生労働省の制度で、職務に関連した訓練を計画に沿って実施した場合に訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成します。人材育成支援コース、教育訓練休暇等付与コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースなどコースが分かれており、いずれも事前の計画届が必要です。コースごとの助成率は改定が入るため、金額は厚生労働省の該当ページでご確認ください。
どちらも原則、後払い
ここは補助金と助成金で共通です。先にお金が振り込まれることはありません。
- 持続化補助金:「補助事業遂行の際には自己負担が必要となり、補助金は後払いです」。交付決定日より前の発注・契約・支払は補助対象外
- 業務改善助成金:交付申請→交付決定→事業の実施(賃金引上げ・設備導入・支払)→事業実績報告→交付額確定→支給。交付決定前に設備を導入した場合は対象外
- キャリアアップ助成金:正社員転換後6か月分の賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内に支給申請
つまり、どの制度でも「動く前に手続き」「立て替えてから受け取る」という順番です。設備代や賃上げ分の資金繰りは自社で用意しておく必要があります。
出典:持続化補助金 第20回公募要領 第8版(PDF)/業務改善助成金リーフレット(PDF)/キャリアアップ助成金リーフレット(PDF)
入金までに実際どれくらいかかるかは補助金はいつもらえる?入金までの期間を実例で解説で、実在する3制度の公表日程をもとに整理しています。
自社はどちらを見に行くか
該当するかどうかの判定はここではできませんが、探す方向を決める材料として次の3つが使えます。
従業員(雇用保険被保険者)がいるか
雇用関係助成金は雇用保険を財源とする制度群です。従業員がいない一人親方・一人社長の状態では、そもそも入口が狭くなります。業務改善助成金のように、労働者がいない場合は対象外と明記している制度もあります。従業員がいないなら、まず補助金側を見るほうが早いでしょう。
やりたいことが「投資」か「雇用の改善」か
新しい設備を入れたい、チラシやウェブサイトで販路を広げたい、新商品を試作したい——こうした事業への投資は補助金の守備範囲です。パートを正社員にしたい、時給を上げたい、社員に研修を受けさせたい——こうした雇用まわりの取組は助成金の守備範囲です。
いつまでに動けるか
補助金は公募回ごとに締切があり、逃すと次回まで待つことになります。助成金は通年で受け付ける制度が多い一方、業務改善助成金のように年度ごとに受付開始日が決まっているものもあります。直近では業務改善助成金の令和8年度交付申請受付開始が2026年9月1日です。
「補助金」「助成金」という名前は絶対ではない
最後に注意点です。この呼び分けは実務上の慣例であり、名称が法律で厳密に定義されているわけではありません。自治体には「◯◯助成金」という名前で設備投資を支援する制度もあれば、「◯◯補助金」という名前で雇用を支援する制度もあります。
見分けるときは名前ではなく、どこが所管しているか、公募要領や交付要綱に何が書いてあるかを確認してください。制度ページの下部にある問い合わせ先が労働局なのか、商工会議所や中小機構なのかを見るのが、いちばん手早い判別法です。
要件を満たすかどうかは、各制度の公募要領や交付要綱・支給要領をご確認のうえ、必要に応じて商工会・商工会議所、労働局、社会保険労務士や中小企業診断士などの専門家にご相談ください。
この記事は2026年8月11日時点の情報です。最新の公募状況は公式サイトでご確認ください。