この記事で分かること
- 補助金にどこまで関与するかを考えるときの、業務範囲と認定支援機関という2つの整理軸
- 顧問先に助言すると、その申請書に支援者として名前と金額が記載される制度があること
- 国・都道府県・市区町村に分散した情報源の実情と、自治体制度の期限の短さ
目次
関与の仕方には段階がある
補助金というと申請書の作成が思い浮かびますが、関与の仕方はそこだけではありません。
申請書類の作成について
日本行政書士会連合会は、行政書士の業務を次のように説明しています。
行政書士は、官公署(各省庁、都道府県庁、市・区役所、町・村役場、警察署等)に提出する書類の作成、同内容の相談やこれらを官公署に提出する手続について代理することを業としています。その書類のほとんどは許可認可(許認可)等に関するもので、その数は1万種類を超えるとも言われます。
同ページには「他の法律において制限されているものについては、業務を行うことはできません」との記載もあります。補助金の申請書類が具体的にどう扱われるかについて、このページに明示はありません。一般に、報酬を得て業として申請書類を作成することは行政書士の業務範囲とされていますが、解釈に関わる部分もあります。個別の判断は所属の税理士会や専門家にご確認ください。
認定支援機関としての関与
一方、制度上はっきり位置づけられている経路もあります。中小企業庁のミラサポplusは、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)を次のように説明しています。
認定経営革新等支援機関(認定支援機関)とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関(税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関等)です。
活用場面として「経営を『見える化』したい」「事業計画を作りたい」(経営状況の分析から事業計画等の策定・実行支援、進捗管理、フォローアップまで)が挙げられています。数字を把握している立場からの事業計画の壁打ちは、この枠組みの中にあります。
助言すると顧問先の申請書に名前が載る
見落とされやすいのがここです。無償のアドバイスでも、申請書への記載対象になる制度があります。
小規模事業者持続化補助金の公募要領には、次の注意書きがあります。
第三者の支援(支援料金の支払いの有無に関わらず)を受けているにも関わらず、確認事項入力(様式2)「商工会・商工会議所を除く第三者からのアドバイスの有無」の項目でその相手方および支援に係る金額(着手金、成功報酬その他名目のいかんを問わず)の記載がない場合には、虚偽の報告として不採択・交付決定取消となります。
同要領は「不当な支援料の請求を防止する観点から、第三者支援者に対して、ヒアリングや現地調査を行う場合がございます」とも記載しています。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領では、認定支援機関を含む外部支援者を「事業計画作成支援者」と呼び、助言を受けること自体は差し支えないとしたうえで、こう書かれています。
必ず申請者自身で作成してください。作成自体を申請者以外が行うことは認められず、発覚した場合は不採択・採択取消・交付決定取消となります。
さらに、不適切な行為が認められた場合について「事業計画作成支援者が認定支援機関である場合には、認定支援機関名の公表、業務改善命令や認定取消に至る可能性があります」との記載があります。なお、事業計画書の作成支援者に対する経費は専門家経費の対象外です。
顧問先に「こういう制度がありますよ」と伝えるところから、記載義務が発生しうる。この前提を共有しておくと、後で顧問先が申請書に何を書けばよいか迷わずに済みます。
出典:小規模事業者持続化補助金 第20回公募要領 第8版(PDF)/新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回公募要領(PDF)
情報源は3階層に分かれている
案内しようにも、情報がひとつの場所にまとまっていません。
| 階層 | 主な情報源 | 押さえておく点 |
|---|---|---|
| 国 | 中小企業庁 補助金公募情報 | 公表日順の一覧。締切が近い順に並べ替える機能はない |
| 国・都道府県 | J-Net21 支援情報ヘッドライン(中小機構) | 「国・都道府県の支援情報」が対象。47都道府県で絞り込み可、RSS配信とメールマガジンあり |
| 市区町村 | 各自治体のサイト | J-Net21の対象は国と都道府県。市区町村の制度は自治体ごとに確認が必要 |
国の制度は数が限られており、公募回のサイクルもある程度読めます。手間がかかるのは3階層目です。市区町村の制度は横断的に集約されている場所が少なく、自治体サイトの「商工」「産業振興」の担当課ページを個別に見に行くことになります。
国の制度の出方については補助金の公募はいつ?年間サイクルと最新日程にまとめています。
自治体の制度は期限が短く、着手前の申請が多い
自治体制度には、国の補助金とは別の難しさがあります。
ひとつは受付期間の短さです。東京都中小企業振興公社の令和8年度事業を見ると、創業助成事業の第1回は2026年4月7日〜4月16日の10日間、市場開拓助成事業は5月15日〜5月29日の約2週間でした。
もうひとつは、事業に着手する前の申請を求めるものが多いことです。愛知県内の制度から実例を挙げます。
| 制度 | 期限の書かれ方 |
|---|---|
| 刈谷市 魅力ある個店創出支援補助金 | 補助対象事業に着手する日の14日前まで |
| 安城市 企業立地促進事業補助認定制度 | 工場等の新設又は増設に着手する日の30日前まで |
| 安城市 企業投資促進事業補助金 | 事業に着手する30日前までに認定申請書を提出 |
| 小牧市 中小企業販路開拓支援補助金 | 開催の30日前までに計画書の提出が必要 |
| 一宮市 貿易振興事業等補助金 | 見本市等の開催日1週間前までに申請すること |
顧問先から「先月、機械を入れ替えました」と聞いた時点では、すでに選択肢が消えていることがあります。逆に言えば、発注前に一言聞けるかどうかが分岐点になります。
出典:東京都中小企業振興公社 助成金事業/愛知県の補助金・助成金一覧
顧問先が複数の市町村にまたがると
負担が増えるのはここです。愛知県を例にすると、県内で申請可能と判定されている制度は72件あり、市区町村別には名古屋市・一宮市・刈谷市・安城市・小牧市・豊田市の制度が並びます。
刈谷市だけでも、魅力ある個店創出支援補助金、中小企業見本市等出展支援事業補助金、新産業技術開発支援補助金、合同企業説明会出展支援事業補助金、人材育成支援事業補助金、中小企業退職金共済制度加入促進補助金、創業者支援事業補助金、マル経利子補給補助金、産業立地促進補助金、首都圏人材確保支援事業補助金と、10件近くが確認できます。
顧問先が5つの市町村に分散していれば、確認先も5倍になります。しかも各制度の受付期間は年に1回・2週間程度ということが珍しくないため、「まとめて年1回チェック」では取りこぼしが出ます。この負担の大きさが、補助金の案内が後回しになりやすい理由でもあります。
案内するタイミングは決まっている
無理に話題を作らなくても、既存の接点の中に自然な場面があります。
| 場面 | 話せること |
|---|---|
| 月次面談 | 直近で公募が始まった制度の有無。設備投資や採用の予定が出ていないかの確認 |
| 決算前の設備投資相談 | 発注のタイミング。交付決定前の発注は対象外になる制度が多い |
| 資金繰りの相談 | 補助金は後払いのため、立て替え期間の資金をどう手当てするか |
3つ目は特に、税理士の立場から話しやすい論点です。小規模事業者持続化補助金の公募要領には「補助事業遂行の際には自己負担が必要となり、補助金は後払いです」と明記されており、交付決定日より前の発注・契約・支払は補助対象外です。補助率2/3の制度でも、事業費の全額を一度用意する必要があります。
入金までにどれくらいかかるかは補助金はいつもらえる?入金までの期間を実例で解説で実在制度の日程を並べています。「採択されたら安心」ではなく、実績報告と額の確定を経てようやく入金される構造を先に共有しておくと、顧問先の資金計画がずれにくくなります。
出典:小規模事業者持続化補助金 第20回公募要領 第8版(PDF)
どこまでやるかは選べる
制度の存在を伝えるだけでも、顧問先が発注前に立ち止まる材料にはなります。事業計画の壁打ちまで踏み込むか、地域の商工会・商工会議所やよろず支援拠点、行政書士につなぐかは、事務所の方針次第です。
要件を満たすかどうかは各制度の公募要領をご確認のうえ、業務範囲に関わる判断については所属の税理士会や専門家にご相談ください。
この記事は2026年8月22日時点の情報です。最新の公募状況は公式サイトでご確認ください。