この記事で分かること
- 2026年時点で飲食店が検討できる3制度を、対象・上限額・補助率・締切で比較
- 店舗改装、厨房設備、テイクアウト対応など使い道ごとにどの制度を見ればよいか
- 車両・汎用パソコン・消耗品・家賃など、飲食店が計上しがちな対象外経費
まず3制度を比べる
制度は絞ったほうが判断しやすくなります。従業員5〜20人規模の飲食店で検討対象になりやすい3つを並べます。
| デジタル化・AI導入補助金2026 | 業務改善助成金 | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | |
|---|---|---|---|
| 所管 | 中小企業庁 | 厚生労働省 | 中小企業庁 |
| 主な使い道 | ソフトウェア、POSレジ・券売機等 | 生産性向上に資する設備投資等(賃上げが条件) | 新製品・新サービス開発、新市場進出 |
| 上限額 | 通常枠:450万円/インボイス枠:ソフトウェア350万円、レジ・券売機等20万円 | 600万円 | 革新的新製品・サービス枠 従業員6〜20人:1,000万円(賃上げ特例適用時1,250万円) |
| 補助率 | 通常枠1/2以内(条件により2/3以内)/インボイス枠 中小企業3/4以内・小規模事業者4/5以内(ハードウェアは1/2以内) | 4/5(事業場内最低賃金1,050円未満)/3/4(1,050円以上) | 中小企業者1/2(条件により2/3)/小規模企業・小規模事業者2/3 |
| 直近の締切 | 4次締切分 2026年8月25日17:00 | 令和8年度の交付申請受付開始は2026年9月1日 | 第1回 2026年10月30日18:00(厳守) |
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠/インボイス枠(インボイス対応類型)/厚生労働省 業務改善助成金/新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回公募要領(PDF)
なお業務改善助成金は厚生労働省の助成金で、補助金とは財源も選ばれ方も違います。両者の性格の差は補助金と助成金の違いで整理しています。
使い道から見た対応表
やりたいことが決まっているなら、こちらから逆に引いたほうが早いです。
| 使い道 | 見に行く制度 | 根拠 |
|---|---|---|
| POSレジ・券売機・モバイルオーダー | デジタル化・AI導入補助金2026(インボイス枠) | ハードウェア対象に「POSレジ・モバイルPOSレジ・券売機」を明記 |
| 予約管理・シフト管理などのシステム | デジタル化・AI導入補助金2026(通常枠) | ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)が対象 |
| 厨房設備の入れ替え | 業務改善助成金 | 「生産性向上に資する設備投資等」が対象。ただし賃金引上げが条件 |
| 新業態への挑戦・新メニュー開発 | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | 革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠 |
| 店舗改装・トイレの改装 | 新事業進出枠(建物費)、または小規模事業者持続化補助金 | 持続化補助金の委託・外注費に「店舗改装・バリアフリー化工事」「利用客向けトイレの改装工事」を例示 |
| テイクアウト・デリバリーの告知 | 小規模事業者持続化補助金 | 広報費・ウェブサイト関連費(各上限30万円・税込、単独申請は不可) |
| 省エネ設備 | 自治体の制度 | 東京都中小企業振興公社「ゼロエミッション推進に向けた事業転換支援事業」など |
デジタル化・AI導入補助金2026
飲食店で使いやすいのはインボイス枠(インボイス対応類型)です。ソフトウェアの補助率は中小企業3/4以内、小規模事業者4/5以内(補助額50万円超の部分は2/3以内)。ハードウェアはPC・タブレット等が10万円以下、レジ・券売機等が20万円以下で、補助率は1/2以内です。
ただし条件があります。ハードウェアのみの申請はできません。「会計」「受発注」「決済」のいずれかの機能を持つソフトウェアが必須で、ハードウェアはそのソフトウェアの使用に資するものであることが求められます。券売機だけを入れ替えたい、という使い方は想定されていません。
通常枠はソフトウェアとクラウド利用料が中心で、ハードウェアの記載はありません。
業務改善助成金
事業場内最低賃金(事業場で最も低い時間給)を50円以上引き上げ、あわせて生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、その費用の一部が助成されます。最大600万円と、この3つの中では設備投資に使える額が大きい制度です。
助成上限額は引上げ額のコース(50円/70円/90円)と引き上げる労働者数で決まります。たとえば90円コースで8人以上を引き上げる場合の上限は450万円です。対象経費の例として「POSレジシステム導入による在庫管理の短縮」が挙げられています。
注意点として、リーフレットには「予算の範囲内で交付するため、申請期間内に募集を終了する場合があります」「同一事業所の申請は年度内1回までです」と書かれています。また事業完了期限は交付決定の属する年度の1月31日です。
出典:厚生労働省 業務改善助成金/令和8年度リーフレット(PDF)
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
革新的な新製品・新サービスの開発や、既存事業とは異なる新市場への進出を支援する制度です。革新的新製品・サービス枠は従業員6〜20人で補助上限1,000万円(賃上げ特例適用時1,250万円)、補助下限額は100万円。新事業進出枠は建物費が対象経費に入り、従業員1〜20人で補助上限2,500万円ですが、補助下限額が750万円と高く設定されています。
補助事業終了後3〜5年の事業計画で、付加価値額の年平均成長率+4.0%以上、一人当たり給与支給総額の年平均成長率+3.5%以上などを満たす必要があり、目標未達の場合は補助金の返還義務が生じます。また、応募申請時点で従業員数が0名の事業者は対象外です。
この制度はものづくり補助金の後継にあたります。移行の経緯と締切の変更についてはものづくり補助金の締切|23次終了後に見る制度と日程で整理しています。
出典:第1回公募要領(PDF)
飲食店が計上しがちな対象外経費
ここを外すと、採択されても交付段階で削られます。
| 経費 | 制度の記載 |
|---|---|
| 自動車・キッチンカー | 持続化補助金は補助対象外経費に「自動車」「キッチンカー」を明記。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金も「船舶」「航空機」「車両及び運搬具」は対象外。業務改善助成金は令和8年度から「自動車(特殊用途自動車を除く)は、助成対象外となりました」 |
| 汎用パソコン・タブレット | 持続化補助金は「パソコン・事務用プリンター・複合機・タブレット端末」等を汎用性が高いものとして対象外。業務改善助成金でPC・スマホ・タブレット等の新規導入が認められるのは特例事業者(物価高騰等要件)のみ |
| 消耗品 | 持続化補助金は名刺、文房具、タオル、シーツ、段ボール、梱包材などを対象外に列挙 |
| 家賃・光熱水費・通信費 | 持続化補助金は「駐車場代、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費」「電話代、インターネット利用料金等の通信費」を対象外。借料についても「事務所等に係る家賃は補助対象となりません」 |
| 飲食費 | 持続化補助金は「茶菓、飲食、奢侈、娯楽、接待の費用」を対象外。展示会等出展費でも「飲食費を含んだ商談会参加費等」は対象外 |
| 単なる取替え更新 | 持続化補助金は「単なる取替え更新であって新たな販路開拓につながらない機械装置等」を対象外。老朽化した既存機械の取替え費用も対象外 |
| 交付決定前の発注・支払 | 3制度とも、交付決定前に発注・契約・購入・支払を行ったものは対象外と明記 |
出典:小規模事業者持続化補助金 第20回公募要領 第8版(PDF)/新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回公募要領(PDF)/令和8年度 業務改善助成金リーフレット(PDF)
厨房設備については「古いものを新しくするだけ」なのか「新しい商品・サービスの提供につながるのか」で扱いが変わります。ここは計画の書き方ではなく、事業の中身の問題です。
従業員数の区分に注意
小規模事業者持続化補助金を検討する場合、業種区分によって従業員数の上限が変わります。
| 業種 | 常時使用する従業員の数 |
|---|---|
| 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 |
| サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
| 製造業その他 | 20人以下 |
5人以下なのか20人以下なのかで、結論がまったく変わります。 公募要領は「業種の判定については、現に行っている事業の業態、または今後予定している業態によって判定します」とし、業種の考え方は別紙「参考資料」を参照するよう案内しています。自店がどの区分になるかは、必ずこの参考資料と公募要領で確認してください。
なお常時使用する従業員には、会社役員、同居の親族従業員、日雇労働者、2か月以内の期間を定めて使用される者、試用期間中の者は含まれません。制度の詳細は小規模事業者持続化補助金の申請要件にまとめています。
動き出す前に
いずれの制度も後払いで、設備代や工事代は一度自店で全額支払う必要があります。入金までの期間の目安は補助金はいつもらえる?入金までの期間を実例で解説で確認できます。繁忙期の資金繰りと重ならないか、先に見ておくことをおすすめします。
要件を満たすかどうかは各制度の公募要領をご確認のうえ、必要に応じて商工会・商工会議所、労働局、専門家にご相談ください。
この記事は2026年8月12日時点の情報です。最新の公募状況は公式サイトでご確認ください。